The Priority Guide / レスポンシブ時代の設計プロセス

Design Process In The Responsive Age
– By Drew Clemens / SMASHING MAGAZINE

教わって読んだ記事です。レスポンシブ・ウェブデザインに取り組むプロセスについて、「従来型の制作プロセスでは、もうダメですよ」という事と、解決策として「プライオリティ・ガイド」というスタイルでワイヤーフレームをつくる方法が提案されています。

以下、要約。

”従来の制作プロセスでは、
レスポンシブ・デザインに対応できない”

デザイナーはPC画面用のPhotoshopだけをつくり、モバイル用(スマホ、タッチデバイス)のレイアウトはフロントエンド・ディベロッパに「おまかせ」にされることが多いが、それでは無理がある。PC版のデザインから「推測」してスマホ向けにレイアウトを組み替えようにも、コンテンツやメニューの重要度や優先順位が見えてこなければ、レイアウトは出来ないからです。

従来型プロセスでそれを解決しようとすると、ちゃんとPC版とスマホ版のワイヤーフレームを作り、その後に、ちゃんとPC版とスマホ版のデザインを作り・・・ということになるが、それでは仕事が増えすぎて何日徹夜をしても終わらない。利益なんか出ないし、身体を壊しておしまいですよ、と。

いずれにしても、従来型のウェブ制作プロセスは見直す必要がある。では、どうすれば良いか。

”解決策「プライオリティ・ガイド」”

プライオリティ・ガイドは、要するに、筆者がモバイル用に使っていたワイヤーフレーム/プロトタイプのこと。元々がモバイル用のため、幅が細い1カラムのワイヤーフレームになっており、結果的に、コンテンツの重要度、優先順位を明確に示すことが出来るようになっている。

・プライオリティ・ガイド – PDFダウンロード

・実施されたサイトデザイン – JPEGダウンロード

  • ディレクター/インタラクション・デザイナーは・・・
    この「プライオリティ・ガイド」でモバイル用のワイヤーフレームだけを設計して、デザイナーに渡せば良い。それが即ちコンテンツの重要度、優先順位を示すことになる。
    またその際、多少ラフでも良いので、コンテンツ(テキスト)は、ダミーでなく本物の内容を入れておく必要がある。
  • デザイナーは・・・
    ディレクターの作った「プライオリティ・ガイド」を元に、PC版のデザインだけを作れば良い。コンテンツの内容と優先度が示されていれば、優れたデザイナーであれば、良いデザインをつくることが出来る。
    PC版にレイアウトされたワイヤーフレームで指示されるよりも、むしろ自由とモチベーションを得ることができる。
  • フロントエンド・ディベロッパは・・・
    ディレクターの「プライオリティ・ガイド」と、デザイナーの「PC版のデザイン」から、レスポンシブなHTML/CSSを作ることができる。デザインパーツ、デザインルールはPSDから、コンテンツの優先度(とモバイル用のレイアウト)は、プライオリティ・ガイドから読み取れるから。
  • 結果・・・
    デザイン・プロセスの制作物も「プライオリティ・ガイド」と「PC版のデザイン」2種類だけで済むので、時間と労力が節約でき効率的である。Enjoy your life.

・・・・以上が、だいたい主な内容です。 – 元の記事ページはこちら

感想1:本格的なレスポンシブは、まだこれから?

海外では(いま居るオランダでも)結構まともにレスポンシブ・ウェブデザインに取り組んでる印象ですが、そもそも日本では、まだそんなに進んでないですよね。すくなくとも「スマホはディベロッパ任せきりになることが多い」とかいう程には。

クライアントから「ワンソースで出来たサイトにしたい」という要望があっても、「実際はコストもかかっちゃって現実的じゃないんですよ」とか、お茶を濁しつつ見送ってる場合も多いのではないでしょうか。

そのためか、クライアントにも「なぜレスポンシブ・デザインなの?」という理由まではあまり伝わっていないのでは。横幅を変えるだけじゃなくて、誰もがモバイルでウェブを見る時代に、コンテンツ重視で(むしろ効率的に)サイトを作って行く意図のものですよ、というあたりが。

RetinaのMacBook Proも出たことだし、レスポンシブ・デザインへの取り組みもこれから本格化して、その「やり方」も(詳細のデザインや、HTML技術とは別に)、今後いろいろ試行錯誤されていくんだと思います。

感想2:これからのウェブ制作者に必要なスキル

制作サイドに関しては、これも日本のウェブデザインの業界で、個々の職種のスキルがそこまで高くないのが実情ではないでしょうか。

この記事の方法でいくと、ウェブ・ディレクターは、コンテンツを企画・掌握する編集者(ときにはライター)の能力が必要で、デザイナーはコンテンツの内容さえ分かれば、それをビジュアル化できるプロであるべきで、フロントエンド・ディベロッパは、PC版のデザインがあればスマホ版はコードだけで描ける人ということになる。

いずれにしても、レスポンシブ・ウェブデザイン、コンテンツ重視の時代では、(その前からだけど)単純にウェブサイトを作るだけの価値は、かなり目減りしてるのは明確で、といいつつ、新しい技術やプラットフォームもバリバリ出てくる。それぞれの職種で、領域や感度の幅を広げながら、かつ深くプロフェッショナルでなければいけない、大変な時期ということですね。

でも同時に、コンテンツ・ファースト、モバイル・ファーストといわれるようになって(つまり技術自体の存在感が薄れてきて)、ウェブがメディアや生活の一部として、やっとスタートラインに立った時期、と言えると思います。


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